研究開発税制(試験研究費の総額の控除)・・・資本金1億円以下の会社と1億円超の会社の違い

研究開発税制(試験研究費の総額の控除)
税理士 兵頭始 著者:兵頭始税理士事務所 税理士 兵頭始
わが国の法人税法は、資本金額が1億円以下の会社を「中小法人」、資本金額が1億円を超える会社を「大法人」として位置づけ、「中小法人」に対しては優遇措置を講じています。
ここでは、
研究開発税制における「中小法人」と「大法人」の違いを説明します。

1.税額控除の対象となる試験研究費の範囲・・・同じ

2.控除率(支出基準額)・・・違う
資本金1億円以下の会社
一律に12%(地方税を併せると14%~14.5%・・・下記5で説明)
資本金1億円超の会社
売上高に対する試験研究費の割合に応じて8%から10%
3.控除限度額(税額基準額)・・・同じ(法人税額の25%)

※但し、資本金1億円以下の会社では、800万円以下の所得(利益)に対して15%の軽減税率(通常は23.9%)により法人税を計算するため、所得が同額の場合は税額基準額は資本金1億円超の会社の方が多くなる。
(最高178,000円)

4.その年度の法人税額から控除しきれなかった場合の繰越控除または繰戻し還付
  ・・・同じ(日本では、繰越控除も繰戻し還付も認められていない)

※1 平成26年度までは、1年間の繰越控除が認められていたが、27年度から認められなくなった。

※2 諸外国においては、その年度の法人税額から控除し切れなかった場合には、翌年度以降の法人税額から控除できることになっている。最短はフランスの3年、最長はオーストラリアの無期限

5.地方税(都道府県民税、市町村民税)の減税・・・違う
資本金1億円以下の会社
地方税の課税標準となる法人税額は、試験研究費の特別控

この結果地方税においても試験研究費の額の2%から2.5%の金額が減税となる

法人税と地方税を併せると、14.%から14.5%の控除率となる

資本金1億円超の会社
地方税の課税標準となる法人税額は、試験研究費の特別控除をする前の金額である

したがって、資本金が1億円を超える会社では、地方税においては減税はない

設例

A社 資本金 1億円
B社 資本金 2億円
売上高 10億円 (A社、B社とも)
課税所得 2億2千万円 (  同上  )
試験研究費 1億円 (  同上  )
1.支出基準額(試験研究費×控除率)

A社 1億円×12%=12,000千円
B社 1億円×10%=10,000千円

2.税額基準額(法人税額×25%)

A社 8百万円×15% = 120万円

2億1千2百万円×23.9%=5,067万円
法人税額 5,187万円×25%=1,297万円

B社 2億2千万円×23.9%=法人税額5,258万円×25%=1,315万円

3.減税額

A社(資本金1億円)

法人税        支出基準額1,200万円≦税額基準額1,297万円 ∴1,200万円
住民税・地方法人税  1,200万円×(住民税16.3%+地方法人税4.4%)=248万円
減税額の合計   1,448万円

B社(資本金2億円)

法人税        支出基準額1,000万円≦税額基準額1,315万円  ∴1,000万円
住民税・地方法人税  減税は適用されない               0万円
減税額の合計  1,000万円

以上により、利益の水準が同じであれば、資本金1億円以下の会社が大きな減税を受けられることが解ります。
※しかし、現実には、中小会社は利益水準が低い会社が多いため、上記2の税額基準額によって足切りとなり、
 この優遇措置を十分に受けられることは少ないと思います。

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研究開発に関する税務や会計は、当事務所の得意分野です。
内閣府や文部科学省の政策立案担当の方々が当事務所を訪れたこともあります。

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