実験用の機械や器具備品などの経理処理はどうするのですか?

実験用の機械や器具備品
税理士 兵頭始 著者:兵頭始税理士事務所 税理士 兵頭始

[1] 企業会計と法人税法で経理処理の方法が異なります

1.企業会計

企業会計では、「研究開発費等に係る会計基準(以下「会計基準」といいます)」に従って経理することになっています。「会計基準」では、次のとおり規定しています。

特定の研究開発目的のみに使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合の原価は取得時の研究開発費とする(会計基準注解2)

したがって、企業会計では、次の2通りの経理処理になります。
(1) 特定の研究開発のためにしか使用できないものは、取得した時に研究開発費 として費用処理する。(期末において未だ使用していない場合であっても「貯蔵品」等として資産計上はしない)

(2) 特定の研究開発以外にも使用できるものは、固定資産として資産計上する。
なお、会計基準が強制的に適用されるのは、次の会社です。
 1.上場会社と、その子会社・関連会社

 2.会社法上の大会社(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上)と、その子会社

 3.任意に会計監査人を設置した会社

これら以外の会社には、会計基準は強制適用されません。
したがって、中小企業は、任意に会計監査人を設置している場合を除き、「研究開発費等に係る会計基準」によって経理しても良いし、次の2.に述べる「法人税法」によって経理しても良いことになります。


2.法人税法

法人税法では、使用目的によって取扱を変えることはしていません。
※耐用年数については、使用目的により異なった取扱いとなる場合があります。
使用目的にかかわらず、法人税法施行令54条(減価償却資産の取得価額)が適用され、これに従って算定した金額を資産計上することになります。

(1)購入した場合
→購入代価(購入付随費用を含む)と、事業の用に供するために(この場合は、実験用に使用するために)直接要した費用の額との合計額

(2)自社で製作等した場合
→製作等に要した、材料費、労務費、経費の額の合計額と、事業の用に供するために(この場合は、実験用に使用するために)直接要した費用の額との合計額

★法人税法においては、課税所得の計算は、「別段の定めのあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準による」ものとしています。(法人税法第22条)

法人税法施行令54条(減価償却資産の取得価額)は、22条でいう「別段の定め」です。

[2]上場会社と会社法上の大会社

(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上) および、これらの会社の子会社など(1.で述べた会社)

1.これらの会社は、経理の処理は、上記1.企業会計の「研究開発費等に係る会計基準」によることになります。

2.そして、課税所得を計算するときには、 上記2.のとおり、法人税法にしたがって計算します。

会社の財務諸表は、「研究開発費等に係る会計基準」による経理に基づいて行いますので、法人税の申告書において、法人税法に準拠して計算し直すことになります。
これを、「申告調整」と言います。

[3]中小企業(上記[2]以外の会社)

中小企業(上記[2]以外の会社)には、「研究開発費等に係る会計基準」の適用は強制されていません。
したがって、上場会社や会社法上の大会社などと同じく、上記の[2]によっても良いし、法人税法の規定によって、経理しても良いことになります。

法人税法の規定によって経理する場合は、会計処理と課税所得の計算方法が同じですので、「申告調整」は必要ありません。

「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です。
研究開発に関する税務や会計は、当事務所の得意分野です。
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