研究開発減税の概略

研究開発減税の利用状況

次の表は、研究開発減税の中心となっている「試験研究費の総額に対する法人税額の控除」の適用状況の調査結果です。
資本金1億円以下

会社の区分
利用数
減税総額
1社又は1グループ
当りの減額税
単体納税法人
5,274社
25,325百万円
4,802千円
連結納税法人グループ
35グループ
685百万円
19,565千円

資本金1億円超

会社の区分
利用数
減税総額
1社又は1グループ
当りの減税額
単体納税法人
3,258社
206,238百万円
63,302千円
連結納税法人グループ
298グループ
287,684百万円
965,383千円
研究開発減税(「試験研究費の総額に係る税額控除」及び「中小企業技術基盤強化税制)の利用状況
(財務省「平成28年度法人税関係租税特別措置の適用実態調査(平成30年2月国会提出)」より作成)

「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です

資本金が1億円を超える会社では1社当たり平均で6千3百万円の減税を受けています。
トヨタ自動車の減税額は、「試験研究費の総額に係る税額控除」だけで約791億円です。
資本金1億円以下の中小企業でも、1社平均で4~5百万円の減税を受けています。
さらに、資本金1億円以下の会社では地方税にも減税が及ぶため、法人税と地方税を合わせると5~6百万円の減税になります。

「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野と言えます。税理士には、税理士法により、顧客に関する情報・機密について守秘義務が課されています。
当事務所は、研究開発に関する税務や会計を得意としています。内閣府や文部科学省の政策立案担当の方々が当事務所を訪れたこともあります。

対象

研究開発減税は、
1 企業の規模の大小に関わりなく適用を受けることができます。
2 既存製品の改良などにも適用があります。
3 新製品の開発などを自社内部では行わずに他の企業や研究機関に委託している場合も、
適用できます。


試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(税額控除)とは、簡単に言うと
「その年度中に行った試験研究にかかった費用の6%~17%だけ、その年度の法人税額を安くする(但し、限度額があります)」措置です。

資本金1億円以下の会社
その年度の試験研究費の12%~17%
(但し、その年度の法人税額の25%~35%が限度となります)

資本金が1億円を超える会社
その年度の試験研究費の6~14%
(但し、その年度の法人税額の25%~35%が限度となります)
(1)
新製品の開発を行う企業
(2)
新技術の開発を行う企業
(3)
新しい製法や工法の開発を行う企業
(4)
既存の製品や技術の改良のために多くの時間や費用を使っている企業
(5)
産学官連携し製品開発・技術開発を行う企業

控除内容

試験研究」と一口に言うと、博士号を持った科学者や技術者がするような高度な研究や、
大企業が研究所で研究開発専門の社員にさせているような研究開発をイメージしがちですが、
税額控除制度の対象となる試験研究は、これらの研究から、製造業や加工業で通常行われている現在の製品や加工技術のちょっとした改良までを含む、非常に範囲の広いものです。
試験研究をすることによって税金がいくら軽減されるかは、次のように計算します。

資本金1億円以下の会社(東京都の場合)
最大限に利用した場合、法人税などの実効税率は、通常の約34.6%が約25.7%となり約9%軽減されます。
(平成30年度・・平成30年4月1日から平成31年3月31日までに開始する年度)
 ※実効税率・・・中小企業者の年所得800万円以下に対する軽減税率は無視しています。

資本金が1億円を超える会社(東京都の場合)
最大限に利用した場合、法人税などの実効税率は、通常の約30.6%が約22.5%となり 約8%軽減されます。
 (平成30年度・・平成30年4月1日から平成31年3月31日までに開始する年度)

資本金1億円超の会社の方が1億円以下の会社より実効税率が低いのは、資本金1億円超の会社では
 事業税に外形標準課税が導入され、事業税の一部が利益以外の付加価値や資本金等を課税標準として
 算定されるために、利益を課税標準として算出される税額のウェイトが低くなっているからです。

★資本金1億円以下の会社  約34.6%➡25.7%(9%軽減)
★資本金1億円超の会社   約30.6%➡22.5%(8%軽減)
※試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(税額控除)制度には、上に書いたやりかた(これを「総額型」と言います)のほかに「高水準型」と呼ばれるものがありますが、「総額型」に付随するもので控除額も少額です。

ここでは税額控除措置の中心である「総額型」に限って説明をします。
次ののいずれか少ない方の金額だけ、その年度の法人税額が減額されます
 試験研究費の総額の6%~17%
  資本金1億円以下の会社・・12%~17%
  資本金1億円超の会社・・・ 6%~14%
  対象費用は、新製品や新技術の開発既にある製品や技術の改良のためにかかった下記費用
   a.材料費
   b.人件費
   c.材料費・人件費以外の経費
   d.外部に試験研究を委託した場合に支払う金額(委託試験研究費)
   などのうち、
   税法で定めた条件に合うものの合計額×6%~14%

※上記の費用のうち、a.材料費とc.経費およびd.委託研究費は、
 新製品や新技術の開発や既にある製品や技術の改良のためにかかったものであれば、
 原則として無条件で減税の対象になります。

※b.の人件費については、専門的知識を持つ者(アシスタントを含みます)が、
 イ)常に試験研究活動に従事している場合のその者の人件費
 ロ)一つの試験研究テーマに、通算して実働1か月以上従事した場合の、その者の人件費のうち
  その試験研究テーマに従事した時間に対応する金額が減税の対象になります。
 <注意>試験研究に携わってはいたが、一つのテーマに従事した時間が実働1か月未満の場合は、
    その者の人件費は、減税対象にはなりません。

  その年度の法人税額の25%~35%(資本金1億円以下、1億円超とも)
控除できる金額は資本金の大きさによって次のようになります。
資本金が1億円以下の会社は、試験研究費が売上高に占める割合によって12%~17%です。
   ↓
資本金が1億円以下の会社は、法人税だけではなく地方法人税および地方税にも減税効果が反映されますので、 結果として約14%~21%となります。(12%~17%×1.173又は1.207)

資本金が1億円を超える会社は、験研究費が売上高に占める割合によって、6%~14%です。

   ↓
資本金が1億円を超える会社は、減税されるのは法人税および地方法人税だけで地方税には反映されません。

対象企業
新技術・新製品の開発を行っている会社、新しい製法や工法の開発を行ってる企業(法人、個人を問いません)。
対象費用
1、材料費2、人件費(要件があります)3、材料・人件費以外の経費4、委託研究費など
控除額
試験研究費の総額6%~17%
その年度の法人税額25%~35%

のいずれか少ない方の金額だけ、その年度の法人税が減税される

計算例

[設例 1 ] 資本金5千万円(試験研究費の増加割合 5%以下)

税引前利益(=課税所得と仮定します)
4,000万円
法人税額
862万円
試験研究費

材料費
500万円

人件費
一つの研究テーマに実働で一か月以上従事した役員・従業員の給料・賞与など
(試験研究活動に従事した時間に対応する金額)

A氏3か月従事年収720万円×3か月分/12月=180万円
B氏6か月従事年収600万円×6か月分/12月= 300万円
C氏9か月従事年収800万円×9か月分/12月=600万円
D氏5か月従事年収1,200万円×5か月分/12月=500万円



1,580万円
経費
220万円
試験研究費の合計額
2,300万円

税額控除額

 試験研究費の総額 2,300万円×12%=299万円
 当期の法人税額 862万円×25%=216万円
 の少ない方の金額 216万円だけ、当期の法人税額が安くなります。
※資本金が1億円以下のため、法人税の税額控除額は地方法人税および都民税などにも反映されますので、
 法人税と地方法人税および都民税などの合計で 約253万円 の減税になります。

法人税
216万円
地方法人税及び都民税など 216万円×17.3%=
37万円
合計
253万円

[設例 2 ] 資本金1億円(試験研究費の増加割合 5%以下)

税引前利益(=課税所得と仮定します)
5億円
法人税額
11,534万円
試験研究費

材料費
3,000万円

人件費 製品開発部門で新製品の開発だけに従事している社員 12,000万円
 ↓
開発部門以外の社員も、必要に応じて新製品の開発業務に携わり、特定の開発に1か月以上従事したものがいるが、作業報告に明確に記録していないため、新製品開発に従事した時間が客観的に明らかになっていない。
 ↓
この場合は、減税を受けることはできません 0万円

経費
(資料の収集費、開発専用の機械などの減価償却費、共通経費の配賦額)
2,000万円
外部の研究機関に研究を委託した費用(委託研究費)
4,000万円
試験研究費の合計額
21,000万円

税額控除額

 試験研究費の総額 21,000万円×12%=2,520万円
 当期の法人税額 11,534万円×25%=2,884万円
 の少ない方の金額 2,520万円だけ、当期の法人税額が安くなります。
※資本金が1億円以下のため、法人税の税額控除額は地方法人税や都民税などにも反映されますので、法人税と都民税などの合計で 約3,042万円 の減税になります。

法人税
2,520万円
地方法人税および都民税など 2,520万円×20.7%=
522万円
合計
3,042万円


[設例 3 ] 資本金5億円(当期を含む4年間の平均売上高に占める試験研究費の割合 15%)

研究開発業務だけを職務とする社員がおり、工場とは別棟の研究所用の独立した建物で、新製品の開発などをしている。
製造部門の社員も、製品化が決まった後の新製品を大量生産するめの研究や、既に販売している製品をより良いものにする改良研究に、必要に応じて携わっている。

税引前利益(=課税所得と仮定します)
30億円
法人税額
69,600万円
試験研究費

材料費
30,000万円
人件費 研究所職員の人件費
110,000万円
一つの研究テーマに実働で一か月以上従事した役員・従業員の給料・賞与など
(試験研究活動に従事した時間に対応する金額)
40,000万円
経費 研究所建物や内部の設備の減価償却費
研究所で発生する水道光熱費その他の経費
30,000万円
その他の経費
10,000万円
外部の研究機関に研究を委託した費用(委託研究費)
20,000万円
試験研究費の合計額
240,000万円

税額控除額

 試験研究費の総額240,000万円×12%=28,800万円
 当期の法人税額 69,600万円×35%=24,360万円
★ 過去4年間の平均売上高に占める試験研究費の割合が15%以上のため
  25%+(15%-10%)×2=35%
 の少ない方の金額 24,360万円だけ、当期の法人税額が安くなります。

※地方税では、資本金が1円を超える法人には研究開発減税は適用されません。
 法人税と地方法人税だけが減税されます。
 減税総額は、約25,432万円となります。

法人税
24,360万円
地方法人税 24,360万円×4.4%=
1,072万円
合計
25,432万円

適用方法

研究開発減税制度による法人税の減税を受けるためには、確定申告書に必要事項を記載し、法人税額の特別控除に関する明細書等を添付した上で税務署に申告する必要があります。
税務調査に備えて、特別控除明細書に記入した金額の基になる書類、帳簿類等を保管する必要があります。
当事務所ではお客様の事業形態や経営規模、研究開発の態様などに応じて研究開発減税を受けるためのコンサルティング業務などを手掛けております。
「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です。
研究開発に関する税務や会計は、当事務所の得意分野です。
内閣府や文部科学省の政策立案担当の方々が当事務所を訪れたこともあります。

「試験研究費の特別控除(法人税額の特別控除)」制度を検討している企業は、
専門家である税理士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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