減税の対象となる「試験研究」

■ 法人税の減額対象となる「試験研究」とは、次のとおりです。

範囲は非常に広い⇒基礎的研究から、日常的な改良活動まで租税特別措置法42の4(試験研究費の特別控除)では、税額控除の対象となる「試験研究」を次のように定義しています。

(1)製品、技術に関する試験研究

 製品の製造に係る試験研究
 技術の改良、考案に係る試験研究
 発明に係る試験研究

これらからに該当すれば、試験研究の段階や内容にかかわらず税額控除の対象となります。

★基礎研究、応用研究、工業化研究など、いずれの段階の研究であっても対象になる
★工業化研究のように、その費用が製造原価に算入されるべきものであっても原則として対象になる
★新製品や新技術に限らず、現に生産中の製品の製造や既存の技術の改良などの試験研究であっても、対象となる

 わかりやすく書くと、次のような活動が代表的なものです。

 ・原理や法則を解明するための科学的な研究
 ・新製品を作ったり既存製品を改良するための、試行錯誤の活動や試作品の製作費用
 ・新技術を開発したり、既存技術を発展させるための、試行錯誤の活動
 ・工場などで日常的に行なっている、現製品の改良活動

★税務上の「試験研究」とは、企業会計その他で言う「研究開発」や「開発研究」を包含する、より広い概念です

※試験研究費の税額控除の対象とならない研究⇒人文科学、社会科学の研究
 次のような活動のための費用は、対象となりません。
  事務能率・経営組織の改善
  販売技術・方法の改良や販路の開拓
  単なる製品のデザイン
  既存製品に対する特定の表示の許可申請のために行うデータ集積等の臨床実験

★税額控除の対象となる「試験研究」とは、科学技術に関する試験研究です。

(2)「新たなサービスの開発」のための試験研究(平成29年度税制改正により新設)

「サービスの開発」とは、ビッグデータやAI (人工知能),IoT(物のインターネット)などを活用した「第4次産業革命」型のサービス開発とされています。

「新たな」とは、「今まで世の中になかった」という意味ではなく、「その企業にとっての新たなサービス」という意味です。
また、以前から提供しているサービスに関連する試験研究であっても、新たな内容が付加される場合やサービスの提供方法が新しくなる場合などは、「新たな」サービスに該当します。

これらのうち、次のからまでの活動が全て行われる場合のからまでの活動が、減税の対象となります。
からまでの活動(サービス設計行程)の全てが行われるかどうかは、計画段階においてからまでの全てを実施することが決定しているかどうかにより判定されます。
したがって、計画段階でからの全てを実行することが決定していれば、中途の段階でその開発が中止になったとしても減税の適用があります。
データの収集・・・センサー等を活用して自動的に種々様々なデータを収集(次のいずれかを行う)
 イ 大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部または主要な部分が自動化されている機器
   若しくは技術を用いて行われる情報の収集
 ロ 上記イの方法によって取得された情報の取得

データの分析・・・情報解析の専門家がAIなどの情報解析技術によってデータを分析
 上記の収集により蓄積された情報について一定の法則を発見するために、情報解析専門家(データサイエンティスト)により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウェア(これに準ずるソフトウェアを含む)を用いて行われる分析

※「情報解析専門家」とは、情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識並びに情報処理に関して
 必要な知識を有すると認められる者をいい、「データサイエンティスト」がこれに当たります。
※情報解析専用のソフトウェアだけでなく、情報解析機能を有するソフトウェアで専用ソフトウエアに
 準ずるものを含みます。
 例えば、情報解析に特に優れたAIや情報解析用にカスタマイズされた汎用ソフトウェアなどです。

サービスの設計・・・データの分析によって得られた一定の法則性を利用した新たなサービスの設計

上記の分析により発見された法則を利用した新たなサービスの設計

サービスの適用・・・そのサービスの再現性を確かめる

 次の2つを確認する(2つとも行う必要がある)。
 イ 上記の分析によって発見された法則が、予測と結果が一致する蓋然性が高い等妥当であると
   認められるものであることの確認(法則の妥当性の確認)
 ロ 上記の分析により発見された法則を利用した新たなサービスが、その目的に照らして適当で
   あると認められるものであることの確認(新たなサービスの合目的性の確認)

★新たなサービスの開発のために上記のからまでの活動の全てを行うが、これらとは別の活動も併せて行う場合、
 減税の適用があります。但し、減税対象となるのはからまでの活動に要する費用だけです。

 [具体例] 経済産業省「研究開発税制の概要」(平成29年)より
 ・自然災害予測サービス・・・ドローンにより山地の地形や土砂、降雪状況等を収集・分析して、
               的確な自然災害予測を提供する。
 ・農業支援サービス  ・・・センサーにより農地の温度や湿度等を細かく収集・分析して、効果的な
               農作業情報を配信する。
 ・ヘルスケアサービス ・・・ウェアラブルデバイスにより個人の健康状態を細かく収集・分析して、
               健康維持サポ―ト情報を配信する。
 ・観光サービス    ・・・ドローンや人工衛星により自然界や生態系情報等を細かく収集・分析して
               観光情報(オーロラや鯨が見られるなど)を配信する。
             
「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です。 税理士には、税理士法により顧客に関する情報・機密について守秘義務が課されています。
研究開発に関する税務や会計は、当事務所の得意分野です。内閣府や文部科学省の政策立案担当の方々が当事務所を訪れたこともあります。

「試験研究費の特別控除(法人税額の特別控除)」制度を検討している企業は、専門家である税理士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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