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2018年6月3日|カテゴリー「研究開発減税QA
試験研究費の費用化
税理士 兵頭始 著者:兵頭始税理士事務所 税理士 兵頭始
ここでは、「試験研究費とはどのような費用をいうのか」という議論は無視します。

単純に、内容やレベルを問わず科学技術の分野における「試験」や「研究」のために要した支出として、話を進めます。その試験研究の内容と結果によって、次のように費用化されます。

 その試験研究が基礎研究や応用研究である場合、又は試験研究による製品等の試作が失敗に終わった場合は、試験研究をした年度の単純な期間費用となる。

 試験研究をした年度の費用としていったん経理するが、原価性がある場合は製品などの製造原価の計算に算入され、製品や仕掛品などの製造原価を構成するため、その製品が売れた年度の費用となる。

 試験研究による試作品が販売可能であったり、自社で使用可能である場合は、ダイレクトに製品や固定資産の取得原価になる。

製品原価になったときはその製品が売れた年度の費用になり、固定資産となったときは減価償却によってその使用可能期間または法定耐用年数にわたって費用化される。


「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です。
研究開発に関する税務や会計は、当事務所の得意分野です。
内閣府や文部科学省の政策立案担当の方々が当事務所を訪れたこともあります。

「試験研究費の特別控除(法人税額の特別控除)」制度を検討している企業は、
専門家である税理士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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2018年6月2日|カテゴリー「研究開発減税QA
試験研究費
税理士 兵頭始 著者:兵頭始税理士事務所 税理士 兵頭始
旧商法と商法時代の税法を念頭に置いた質問・疑問だと思います。
「償却」とは、資産として計上されたものを費用化することなどを意味しています。
結論から言うと、現在、試験研究費には「償却」という考えはありません。
旧商法・旧税法では、次の活動のために支出した金額を、「繰延資産」として計上し得るとしていました。
「繰延資産」とは、つぎのものを言います。

 会計の定義

すでに代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待されている費用(企業会計原則注解15)

 税法の定義

法人が支出する費用のうち、支出の効果がその支出の日以後1年以上におよぶもの(法人税法2条二十四号)


旧商法・商法時代の税法で言う繰延資産として計上し得る「試験研究費」とは、次のように定義されていました。

 企業会計原則(企業会計原則と関係諸法令の調整に関する連続意見書)

現に営業活動を営んでいる企業が、新製品の試験的製作、あるいは新技術の研究等のために特別に支出した金額

 商法

新製品又は新技術の研究のために特別に支出した金額
支出後5年以内に毎期均等額以上を「償却」しなければならない。

 税法

新たな製品の製造または新たな技術の発明に係る試験研究のために特別に支出する費用
これらは、商法では5年以内に毎期均等額以上を償却しなければならないとされていました。
税法では、任意償却の繰延資産とされ、いつ、いくらでも、法人の任意で償却できるとされていました。
旧商法および平成19年改正前の税法では、「繰延資産」とされていました。

平成18年、商法に替わって会社法が制定されたことにより、さらにこれを受けた平成19年の税制改正により、上記の「試験研究費」は会計上も税務上も繰延資産から除外され、「試験研究費」それ自体で資産として貸借対照表に計上されることはなくなりました。

その内容と結果に応じて、単純な期間費用(一般管理費)となったり、製造費用となって原価計算に取り込まれて製品原価等となったり、あるいは固定資産の取得原価になります。


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2018年6月1日|カテゴリー「研究開発減税QA
実験用の機械や器具備品
税理士 兵頭始 著者:兵頭始税理士事務所 税理士 兵頭始

[1] 企業会計と法人税法で経理処理の方法が異なります

1.企業会計

企業会計では、「研究開発費等に係る会計基準(以下「会計基準」といいます)」に従って経理することになっています。「会計基準」では、次のとおり規定しています。

特定の研究開発目的のみに使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合の原価は取得時の研究開発費とする(会計基準注解2)

したがって、企業会計では、次の2通りの経理処理になります。
(1) 特定の研究開発のためにしか使用できないものは、取得した時に研究開発費 として費用処理する。(期末において未だ使用していない場合であっても「貯蔵品」等として資産計上はしない)

(2) 特定の研究開発以外にも使用できるものは、固定資産として資産計上する。
なお、会計基準が強制的に適用されるのは、次の会社です。
 1.上場会社と、その子会社・関連会社

 2.会社法上の大会社(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上)と、その子会社

 3.任意に会計監査人を設置した会社

これら以外の会社には、会計基準は強制適用されません。
したがって、中小企業は、任意に会計監査人を設置している場合を除き、「研究開発費等に係る会計基準」によって経理しても良いし、次の2.に述べる「法人税法」によって経理しても良いことになります。


2.法人税法

法人税法では、使用目的によって取扱を変えることはしていません。
※耐用年数については、使用目的により異なった取扱いとなる場合があります。
使用目的にかかわらず、法人税法施行令54条(減価償却資産の取得価額)が適用され、これに従って算定した金額を資産計上することになります。

(1)購入した場合
→購入代価(購入付随費用を含む)と、事業の用に供するために(この場合は、実験用に使用するために)直接要した費用の額との合計額

(2)自社で製作等した場合
→製作等に要した、材料費、労務費、経費の額の合計額と、事業の用に供するために(この場合は、実験用に使用するために)直接要した費用の額との合計額

★法人税法においては、課税所得の計算は、「別段の定めのあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準による」ものとしています。(法人税法第22条)

法人税法施行令54条(減価償却資産の取得価額)は、22条でいう「別段の定め」です。

[2]上場会社と会社法上の大会社

(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上) および、これらの会社の子会社など(1.で述べた会社)

1.これらの会社は、経理の処理は、上記1.企業会計の「研究開発費等に係る会計基準」によることになります。

2.そして、課税所得を計算するときには、 上記2.のとおり、法人税法にしたがって計算します。

会社の財務諸表は、「研究開発費等に係る会計基準」による経理に基づいて行いますので、法人税の申告書において、法人税法に準拠して計算し直すことになります。
これを、「申告調整」と言います。

[3]中小企業(上記[2]以外の会社)

中小企業(上記[2]以外の会社)には、「研究開発費等に係る会計基準」の適用は強制されていません。
したがって、上場会社や会社法上の大会社などと同じく、上記の[2]によっても良いし、法人税法の規定によって、経理しても良いことになります。

法人税法の規定によって経理する場合は、会計処理と課税所得の計算方法が同じですので、「申告調整」は必要ありません。

「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です。
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